京都大学医学部附属病院とPST株式会社は、婦人科がん患者様のQOL管理のためのソフトウェア開発を目指し、共同研究を開始いたしました
音声病態分析技術「VOISFIA®」および「MIMOSYS®」を提供するPST株式会社(以下、PST)は、京都大学医学部附属病院 婦人科産科学 様(以下、京大婦人科産科)と、婦人科がん患者様を対象に、QOLの維持・向上を目的として、共同研究を開始いたしました。
本研究においては、PSTの音声病態分析技術を用いて、婦人科がんにより京大婦人科産科通院している患者様の体調やQOLに影響を及ぼす因子を数値化し、それにより医療従事者による患者様の体調変動の早期発見および早期治療、さらには自己の行動変容につなげることを可能とするQOL管理ソフトウェアを開発、提供することを目標とします。
【VOISFIA®について】
VOISFIA®とは、様々な音声症状を数値化し、特定の機能障害や疾病のリスクを高精度で予測する病態サーチエンジンです。現在、多くの疾患領域において研究開発を進めており、VOISFIA®は、音声バイオマーカーとして、ヘルスケアからメディカルにおける幅広いシーンで利用されることを目指しています。
【MIMOSYS®について】
MIMOSYS®(Mind Monitoring System)とは、声帯の変化(不随意反応)を含めた音声解析により、心の状態を「可視化」する未病音声分析技術です。東京大学大学院工学系研究科 特任教授 徳野慎一先生によって医学的に検証されており、言葉、国籍、性別、年齢、個人差の影響を受けることなく、日常の声から客観的かつ手軽に心の健康度をチェックすることができます。
【本研究の背景】
近年、がんの治療の目的として、がんを治すだけではなく患者のQuality of Life (QOL)を向上もしくは維持させ、精神的・社会的な日常生活を改善することが求められており、「がんサバイバーシップ」と呼ばれています。「がんサバイバーシップ」は日常生活に即した問題であることから、病院を受診した際の診察、検査のみならず、日常生活情報等の健康データをいかに診療に取り入れるかという課題がありました。それを受けて本研究においては、客観的かつ簡便な精神状態の定量化技術として、PSTの「VOISFIA®」および「MIMOSYS®」を導入することとなりました。
本研究の成果は、婦人科がん患者のヘルスケアサポート(QOL向上)、がんサバイバーシップに関する医学・医療の今後の発展に寄与することを目指します。
【本研究について】
京大医学研究科の万代昌紀教授、山口建講師を中心とした研究チームで実施される本研究は、京都大学医学部附属病院の産科婦人科やその関連施設で診断、治療、経過観察を行う18歳以上の婦人科がん患者様を研究対象者とし、治療および本研究への参加にあたり説明を受けた後、理解の上、文書同意が得られた方を対象に行われます。
【京都大学大学院医学研究科 婦人科学産科学教室について】
1899年に京都帝国大学医科大学が開設され、婦人科学・産科学教室(当教室)が創設、2019年で120周年を迎えました。現在の第10代教授である万代昌紀教授にいたるまで、当教室は婦人科がんと深くかかわってきた歴史があります。特に子宮頸癌は第2代高山尚平教授が発表した高山術式は子宮頸癌に対する広汎子宮全摘術の基礎となり、第3代岡林秀一教授が改良した岡林術式は現在の子宮頸癌手術の標準術式となっています。第4代の三林隆吉教授は超広汎子宮全摘術を考案しました。第8代の藤井信吾教授は子宮頸癌に対して出血量の少ない膀胱神経温存術式を考案し、現教授の万代昌紀教授は本邦で先駆けて鏡視下広汎子宮全摘術を行っています。また、子宮頸癌以外にも免疫療法の基礎研究から卵巣癌に対する抗PD1抗体の医師主導治験、がんゲノム解析、婦人科がんの発生や抗がん剤耐性の解明など、時代のニーズとともに将来の展望を心掛けた研究をしています。
URL:https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~obgy/labo/st_g018.html