研究活動における不正行為への対応等に関する規程

第1章 総則

(目的)
第1条 この規程は、PST株式会社における公的資金を用いた研究活動における不正行為の防止及び不正行為が生じた場合における適正な対応について必要な事項を定める。

(定義)
第2条 この規程における用語の定義は次に定めるとおりとする。
(1)「特定不正行為」とは、故意又は研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる、投稿論文など発表された研究成果の中に示されたデータ、調査結果等の捏造、改ざん及び盗用をいう。
(2)「捏造」とは、存在しないデータ、研究結果等を作成することをいう。
(3)「改ざん」とは、研究資料、研究機器又は研究過程を変更する操作を行い、データ、研究結果等を真正でないものに加工することをいう。
(4)「盗用」とは、他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を、当該研究者の了解もしくは適切な表示なく流用することをいう。
(5)「研究活動における不正行為」とは、次に掲げる行為をいう。
ア 第1号に定める「特定不正行為」
イ 他の学術誌等に既発表又は投稿中の論文と本質的に同じ論文を投稿する「二重投稿」
ウ 論文著作者が適正に公表されない「不適切なオーサーシップ」
(6)「研究者等」とは、PST株式会社に雇用されている者及びPST株式会社の施設や設備を利用している者のうち、公的資金を用いた研究に従事している者又は携わる者をいう。
(7)「研究倫理教育」とは、研究活動における不正行為の事前防止に資するため、研究活動において求められる倫理規範を研究者に習得させるための教育をいう。


第2章 研究倫理教育

(研究活動における不正行為への対応に係る体制)
第3条 第1条の目的を達成するため、研究活動における不正行為への対応に関する体制を次の各号のとおり定める。
(1)代表取締役は、最高管理責任者として機構全体を統括し、研究活動における不正行為への対応に関して最終責任を負う。
(2)管理部長は、統括管理責任者として最高管理責任者を補佐するとともに、研究活動における不正行為への対応を統括する。
2 研究倫理教育の実施にあたる研究倫理教育責任者を設置する。
3 研究倫理教育責任者は、PST株式会社に所属する全ての研究者及び研究活動に関わる全ての職員等(研究支援人材を含む)に対し、他の機関で受講させることも含めて、定期的に研究倫理教育を実施しなければならない。


第3章 研究データ等の保存・開示

(研究者等の責務)
第4条 研究者等は、研究活動の正当性の証明手段を確保するとともに、第三者による検証可能性を担保するため、生データ、研究ノートその他の研究資料等を5年間、適切に保存・管理し、開示の必要性及び相当性が認められる場合には、これを開示しなければならない。

(研究データ等管理責任者)
第5条 前条における保存、管理及び開示についての責任者は主任研究員とする。


第4章 不正行為に関する告発の受付

(告発の受付窓口)
第6条 告発又は相談への迅速かつ適切な対応を行うため、不正行為に関する告発等の窓口を、管理部に置くものとする(以下「告発窓口」という。)。
2 告発窓口が不正に関与している恐れがある場合は、告発窓口を別に置く等、告発の受付を行う者が自己との利害関係を持つ事案に関与しないよう取り計らう。

(告発の受付体制)
第7条 研究活動上の不正行為を発見した者又は不正行為があると思料する者は、書面電話又は面談等により告発窓口に告発を行うことができる。
2 告発は、原則として顕名により行うものとし、研究活動上の不正行為を行ったとする研究者又は研究グループ等、研究活動上の不正行為の態様、時期、事案の内容が明示され、かつ、不正とする合理的理由が示されていなければならない。
3 告発窓口は、前2項の規定に関わらず、匿名による告発があった場合、告発の内容に応じ、顕名の告発があった場合に準じた取扱いをすることができる。
4 告発窓口の責任者は、告発者(匿名の告発者を除く)に受け付けた旨を通知する。ただし、面談による告発等であって、告発窓口が受け付けたことが明らかな場合はこの限りではない。
5 新聞等の報道機関、インターネット又は研究者コミュニティ等により、不正行為の疑いが指摘された場合(研究活動上の不正行為を行ったとする研究者又は研究グループ等の氏名又は名称、不正行為の態様、時期、事案の内容等が明示され、かつ、不正とする合理的理由が示されている場合に限る。)は、第3項の告発があった場合に準じて取り扱う。
6 研究活動上の不正行為の疑いがあると思料する者で、告発の是非や手続きについて疑問がある者は、告発窓口に対して相談することができる。
7 告発の意思を明示しない相談があった場合、告発窓口はその内容を確認・精査し、相当の理由があると認めた場合は相談者に対して告発の意志があるかを確認する。
8 告発窓口は、告発、相談の如何に関わらず、受け付けた内容を直ちに最高管理責任者に報告するとともに、その後も継続的に経過報告を行わなければならない。
9 第8項の報告があった場合、最高管理責任者はその内容を確認し、相当の理由があると認めたときは、その報告内容に関係する者に対して警告を行うものとする。
10 本条の規定による告発の受付に関与する者は、告発を行った者(以下「告発者」という。)及び告発において不正行為を行ったとされる者(以下「被告発者」という。)を特定する情報並びに告発等の内容について、告発者及び被告発者の意に反して受付関係者以外の者に遺漏しないよう、秘密の保持を徹底しなければならない。

(告発者及び被告発者の取扱い)
第8条 この規定に関わる業務に携わる全ての者は、告発窓口に寄せられた告発の告発者、被告発者、告発内容、相談内容及び調査内容について、個室で面談を行ったり、電話や電子メールなどを窓口の担当職員以外は見聞できないような措置を講ずるなど、告発者及び被告発者の意に反して調査関係者以外に漏洩しないよう、関係者の秘密保持を徹底する。
2 最高管理責任者は、当該告発に係る事案が外部に漏洩した場合、告発者及び被告発者の了解を得て、調査中に関わらず、事案について公に説明することができる。ただし、告発者又は被告発者の責により漏洩した場合は、当人の了解は不要とする。
3 最高管理責任者は、悪意に基づく告発であることが判明しない限り、単に告発したことを理由に告発者に対し、解雇、配置転換、懲戒処分、降格、減給等の不利益な取扱いをしてはならない。
4 最高管理責任者は、相当な理由なしに、単に告発がなされたことのみをもって、被告発者の研究活動の部分的又は全面的禁止や、解雇、配置転換、懲戒処分、降格、減給等の不利益な取扱いをしてはならない。


第5章 事案の調査

(調査を行う機関)
第9条 最高管理責任者は、告発の受付や調査・事実確認を行う者が利害関係を持つ事案に関与しないよう取り計らい、告発の受理又は不受理を決定し、当該告発者にその結果を通知する。
2 最高管理責任者は、前項により告発の受理を決定した場合は、研究者等に対し、それらが保有する研究に関するアイディア、研究資料、分析・解析方法、データ、研究結果の保全を命ずる。

(予備調査)
第10条 第7条に基づく告発があった場合、最高管理責任者は速やかに予備調査委員会を設置し、予備調査を指示する。
2 予備調査委員会は、数名の委員によって構成するものとし、最高管理責任者が指名する。
3 最高管理責任者は、予備調査委員会構成員の氏名を告発者及び被告発者に通知する。
4 告発者及び被告発者は、予備調査委員会構成員に不服のある場合は、通知後3日以内に最高管理責任者に不服申立てを行う。
5 最高管理責任者は、告発者又は被告発者から前項による不服申立てが出された場合は、申立ての理由を精査し、相応の理由が認められる場合は、当該申立てに係る構成員を変更するとともに、その旨を告発者及び被告発者に通知する。
6 予備調査委員会は、告発された不正行為が行われた可能性、告発の際示された科学的な合理性のある理由の論理性、告発された事案に係る研究活動の公表から告発までの期間が、生データ、研究ノートなど研究成果の事後の検証を可能とするものについての各研究分野の特性に応じた合理的な保存期間、又は被告発者が所属する研究機関が定める保存期間を超えるか否かなど告発内容の合理性、調査可能性等について予備調査を開始する。
7 告発がなされる前に取り下げられた論文等に対する告発に係る予備調査を行う場合は、取り下げに至った経緯・事情を含め、不正行為の問題として調査すべきものか否かを調査し、判断するものとする。
8 予備調査委員会は、被告発者等の公表前の資料等研究上又は技術上秘密とすべき情報が、予備調査遂行上必要な範囲外に漏洩することのないよう徹底する。
9 予備調査委員会は、告発を受けてから原則として30日以内に予備調査を終了し、予備調査の概要、不正行為の有無及びその判断根拠等を記載した予備調査結果報告書を最高管理責任者に提出するとともに告発者、被告発者及び配分機関に通知する。
10 告発者及び被告発者は、通知された予備調査結果に不服のある場合、通知から7日以内に、不服申立書を最高管理責任者に提出することができる。
11 予備調査委員会は、予備調査終了後も予備調査に係る資料等を保全し、その事案に係る配分機関及び告発者の求めに応じて開示する。

(本調査の決定)
第11条 最高管理責任者は、予備調査結果を踏まえ、予備調査結果報告書を受領した日より原則として14日以内に、本調査を行うか否かを決定する。
2 最高管理責任者は、本調査を実施することを決定した場合、告発者及び被告発者に対して本調査を行う旨を通知する。
3 最高管理責任者は、本調査を実施しないことを決定した場合、その理由を付して告発者に通知する。
4 最高管理責任者は、本調査を実施することを決定した場合、当該事案に係る研究費の配分機関及び関係省庁に本調査を行う旨を報告する。
(本調査委員会の設置)
第12条 最高管理責任者は、本調査を実施することを決定した場合、原則として14日以内に本調査委員会を設置し、本調査を開始させる。
2 本調査委員会の委員の半数以上は、PST株式会社に属さない外部有識者でなければならない。また、全ての委員は告発者及び被告発者と直接の利害関係を有しない者でなければならない。
第13条 最高管理責任者は、本調査の実施、本調査委員会構成員の氏名及び所属を告発者及び被告発者に通知し、調査への協力を求める。告発された事案の調査にあたっては、告発者が了承したときを除き、調査関係者以外の者や被告発者に告発者が特定されないよう周到に配慮する。
2 告発者及び被告発者は、前項により通知された構成員に不服がある場合は、通知後7日以内に最高管理責任者に不服申立てを行う。
3 最高管理責任者は、告発者又は被告発者から不服申立てが出された場合、申立ての理由を精査し、相応の理由が認められる場合は、当該申立てに係る構成員の変更を行うとともに、その旨を告発者及び被告発者に通知する。

(本調査の実施)
第14条 本調査委員会は、本調査を行うにあたって告発案件に係る公表前データ、論文等研究上又は技術上秘密とすべき情報が、本調査遂行上必要な範囲外に漏洩することのないよう徹底する。
2 本調査は、被告発者の自認を唯一の証拠とせず、予備調査結果報告書、保全された生データ、研究ノート等の物的・科学的証拠、調査委員会が自ら収集した資料等の精査及び当該事案に係った者等への事情聴取や再実験の要請など諸証拠の総合的調査により行い、被告発者の研究体制、データチェックのなされ方など様々な点から客観的不正行為事実及び故意性等を判断する。また、本調査を行うにあたって被告発者に書面又は口頭による弁明の機会を与えなければならない。
3 本調査委員会が再実験などにより再現性を示すことを被告発者に求める場合、又は被告発者自らの意思によりそれらを申し出て調査委員会がその必要性を認める場合は、本調査委員会の指導・監督の下、それに要する期間および機会(機器、経費等を含む)に関し本調査委員会により合理的に必要と判断される範囲において、これを行う。被告発者は、自己の責任において、当該研究活動が科学的に適正な方法と手続きに則って行われたこと、論文等もそれに基づいて適切な表現で書かれたものであることを、科学的根拠を示して説明しなければならない。
4 告発者、被告発者及びその他当該告発に係る事案に関係する者は、調査が円滑に実施できるよう積極的に協力し、事実を忠実に述べるなど、本調査に誠実に協力しなければならない。
5 本調査委員会は必要に応じて外部の機関と情報交換等の連絡協議をすることができる。また、外部の機関から協力を要請された場合は誠実に協力する。
6 調査の対象には、告発された事案に係る研究活動のほか、本調査委員会の判断により調査に関連した被告発者の他の研究活動も含めることができる。
7 本調査委員会は、本調査を実施するにあたって、告発された事案に係る研究活動に関し、証拠となる資料及びその他関係書類を保全する措置をとらなければならない。
8 被告発者は、証拠となる資料等の保全の措置に影響しない範囲であれば、研究活動を行うことができる。

(調査中における一時的措置)
第15条 最高管理責任者は、本調査の終了前であっても、必要に応じ本調査の中間報告を当該調査委員会に求めることができる。また、当該配分機関等の求めに応じ、調査継続中の事案に係る中間報告や資料の提出・閲覧に応じるよう、当該調査委員会に指示する。当該調査委員会は、正当な理由なくこれを拒むことはできない。
2 最高管理責任者は、本調査を行うことが決まった後、調査機関から調査結果の通知を受けるまでの間、告発された研究に係る研究費の支出の停止を命ずることができる。また、被告発者から別に申請している研究資金について、採択の決定、あるいは採択決定後の研究費の交付を保留(一部保留を含む)することができる。

(不法行為の認定)
第16条 本調査委員会は、原則として本調査開始後150日以内に不法行為の有無を認定する。
2 被告発者の説明及びその他の証拠によって、不正行為であるとの疑いが覆らないときや、生データや研究ノート等の不存在など、本来存在するべき基本的な要素の不足により、不正行為であるとの疑いを覆すに足る証拠を示せないときは、不正行為と認定される。この時の説明責任の程度及び本来存在すべき基本要素については、研究分野の特性に応じ、本調査委員会が判断する。ただし、被告発者が善良な管理者の注意義務を履行していたにも関わらず、災害などの理由により上記の基本的な要素を満たせなくなった場合等正当な理由があると認められる場合や、生データや研究ノート等の不存在が、各研究分野の特性に応じた合理的な保存期間や被告発者が所属する、又は告発された事案に係る研究を行っていたときに所属していた研究機関が定める保存期間を超えることによるものである場合はこの限りではない。
3 本調査委員会は不正行為が認められた場合は、その内容、不正行為に関与した者とその関与の度合い、不正行為と認定された研究活動に係る論文等の各著者の当該論文等及び当該研究活動における役割、不正使用の相当額等を認定し、調査の結果とともに最高管理責任者に報告する。一方、不正行為が認められなかったときは、その旨を調査の結果とともに最高管理責任者に報告する。
4 最高管理責任者は、調査結果を速やかに告発者及び被告発者に通知する。被告発者の所属機関がPST株式会社以外の場合は、被告発者の所属機関に結果を通知する。
5 最高管理責任者は、告発の受付から210日以内に、調査結果、不正発生要因、不正に関与した者が関わる他の競争的研究費等における管理・監査体制の状況、再発防止計画等を配分機関及び関係省庁に報告する。期限までに調査が完了しない場合であっても、本調査の中間報告を配分機関及び関係省庁に提出する。
6 本調査委員会は、調査結果通知後14日間を不正行為と認定された被告発者からの不服申立て期間とし、被告発者に弁明の機会を与えなければならない。
7 不正行為と認定された被告発者からの不服申立てがなされた場合、その旨を告発者に通知する。加えて、当該事案に係る配分機関及び関係省庁に報告する。
8 前項の不服申立てがなされた場合、その内容について本調査委員会は不服申立ての趣旨、理由等を勘案し、その事案の再調査を行うか、再調査を行うまでもなく不服申立てを却下すべきかを決定する。決定した結果は、当該事案に係る配分機関、関係省庁に報告する。不服申立ての趣旨が新たな専門的判断を要し、本調査委員会だけでは対応できない場合、調査委員を交代若しくは追加した上で再審査を行う。ただし、同一理由による不服申立ては一度限りとし、当該不服申立てが当該事案の引き延ばしや認定に伴う各措置の先送りを主な目的とすると本調査委員会が判断したときは、以後の不服申立てを受け付けないことができる。

9 本調査委員会が前項の再調査を開始した場合は、告発者に通知し、当該事案に係る配分機関及び関係省庁に報告する。被告発者に対し、先の調査結果を覆すに足る資料の提出等、当該事案の速やかな解決に向けて、再調査に協力することを求める。協力が得られない場合には、再調査を行わず、審査を打ち切ることができる。再調査により49日以内に先の調査結果を覆すか否かを決定する。
10 不服申立ての却下または再審査の結果は、調査委員会が最高管理責任者に報告するほか、再審査を要求した被告発者とその事案の告発者、被告発者の所属機関へも通知する。加えて、その事案に係る配分機関及び関係省庁にも報告する。
11 本調査委員会は、不正行為がなかったと認定される場合であって、悪意による告発であると判明したときには、その旨を本調査の結果とともに最高管理責任者に報告し、告発者及び告発者の所属機関に通知する。
12 本調査委員会は、前項の通知後14日間を不服申立て期間とし、悪意による告発であると認定された告発者に弁明の機会を設ける。
13 悪意に基づく告発と認定された告発者からの不服申立てがなされた場合は、その旨を告発者が所属する機関及び被告発者に通知する。加えて、その事案に係る配分機関及び関係省庁に報告する。
14 前項の不服申立てがなされた場合、その内容について本調査委員会は3項に準じた再審査を行い、先の調査結果を覆すか否かを28日以内に決定する。その際、同一の理由による不服申立ては一度限りとする。再審査の結果は、悪意の告発と認定された告発者、告発者の所属機関及び被告発者へも通知する。加えて、当該事案に係る配分機関、関係省庁に報告する。

(調査結果の公表)
第17条 最高管理責任者は、研究活動上の不正行為が行われたとの認定がなされた場合、速やかに、調査結果を公表するものとする。
2 前項の公表における公表内容は、研究活動上の不正行為に関与した者の氏名・所属、研究活動上の不正行為の内容、PST株式会社が公表時までに行った措置の内容、調査委員の氏名・所属、調査方法・手順等を含むものとする。
3 前項の規定に関わらず、研究活動上の不正行為があったと認定された論文等が、告発がなされる前に取り下げられていたときは、当該不正行為に関与した者の氏名・所属を公表しないことができる。
4 研究活動上の不正行為が行われなかったとの認定がなされた場合は、調査結果を公表しないことができる。ただし、被告発者の名誉を回復する必要があると認められる場合、調査事案が外部に漏洩していた場合又は論文等に故意若しくは研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによるものでない誤りがあった場合は、調査結果を公表するものとする。
5 前項ただし書きの公表における公表内容は、研究活動上の不正行為がなかったこと、論文等に故意又は研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによるものではない誤りがあったこと、被告発者の氏名・所属、調査委員の氏名・所属、調査方法・手順等を含むものとする。
6 最高管理責任者は、悪意に基づく告発が行われたとの認定がなされた場合、告発者の氏名・所属、悪意に基づく告発と認定した理由、調査委員の氏名・所属、調査方法・手順等を公表する。


第6章 措置及び処分

(措置の決定)
第18条 最高管理責任者は、本調査委員会において不正行為との認定があった場合、不正行為を行ったと認定された者(以下「被認定者」という。)に対する措置を決定する。なお、被認定者の弁明の聴取及び措置決定後の不服申立ての受付は行わない。

(措置決定の通知)
第19条 最高管理責任者は、前条の規定により決定した措置及び被認定者等について、被認定者及び被認定者が所属する研究機関に通知する。また、配分機関及び関係省庁にも報告する。

(不正行為が行われなかったと認定された場合)
第20条 不正行為が行われなかったと認定された場合、告発以降にとった研究費支出の停止や採択の保留等の措置を解除する。証拠保全の措置については、不服申立てがないまま申立て期間が経過した後、又は、不服申立ての審査結果が確定した後、速やかに解除する。
2 PST株式会社は、不正行為が行われなかった旨を調査関係者(当該事案が遺漏している場合は、調査関係者以外にも)に対して周知し、不正行為を行わなかったと認定された者の名誉を回復する措置及び不利益が生じないための措置を講じる。

(措置の対象者)
第21条 措置の対象者は次の各号に掲げる者とする。
(1) 不正行為があったと認定された研究に係る論文等の不正行為に関与したと認定された著者(共著者を含む。以下同じ。)
(2)不正行為があったと認定された研究に係る論文等の著者ではないが、当該不正行為に関与したと認定された者
(3)不正行為に関与したとまでは認定されないものの、不正行為があったと認定された研究に係る論文等の内容について責任を負う者として認定された著者
(4)悪意による告発をしたと認定された者

(措置の内容の決定)
第22条 最高管理責任者は、前条に掲げる者に対し、次条から第26条までに規定する措置を講じる。
2 措置の内容は次条の規定を標準とし、不正行為の重大性、悪質性、個々の被認定者の不正行為への具体的な関与の度合いや不正行為があったと認定された研究における立場、不正行為を防止するための努力の有無等により又は悪意による告発の悪質等により事案ごとに定める。ただし、最高管理責任者が特に必要と判断するときは、次条の規定の措置以外の措置をとることができる。
3 告発等がなされる前に論文等を取り下げていた場合、又は、告発等がなされた後、直ちに当該論文等を取り下げた場合に係る被認定者に対する措置は、前条第3号に掲げる者に対してはとらないものとし、同条第1号及び第2号に掲げる者に対しても、情状によって適切な配慮を行う。
4 最高管理責任者は、不正行為又は悪意による告発に係る懲戒処分を法令、就業規則その他関係諸規定に従って処分を課すものとする。

(研究課題の打ち切り等)
第23条 最高管理責任者は、不正が認定された研究課題のうち第22条に掲げる全ての者が行っていた研究を打ち切る。当該研究資金のうち不正行為の認定がなされた時点において未だ配分されていない研究費及び次年度以降配分が予定されている研究費については、以後分配しない。
2 不正行為があったと認定された研究が研究計画の一部である場合にあっては、当該研究計画に係る研究を打ち切るか否かは、措置対象者以外の研究者の取扱いを含めて、事案ごとに判断する。
3 第21条第1号及び第2号に掲げる者に対して、不正が認定された研究課題以外の研究課題については以下のとおりとする。
(1)第21条第1号及び第2号に掲げる者が研究代表者となっている研究については打ち切りとし、以後研究費を配分しない。
(2)同条第1号及び第2号に掲げる者が研究分担者又は研究補助者となっている研究については、当人による研究費使用を認めない。
4 不正行為に関与した者の今後の研究活動については、その不正行為の程度により、適切な措置を講じる。また、不正行為と認定された論文等の取下げを勧告する。
5 不正行為が認定された時点で第21条の第1号から第3号までに該当する被認定者が研究代表者となって申請している課題については、その取下げを命じる。
6 不正行為が認定された時点で第21条の第1号から第3号までに該当する被認定者が研究分担者又は研究補助者となって申請している課題については、当人を除外しなければ申請を認めない。また、採択後に、当人が除外されていないことが判明した場合は、その採択を取り消すことができる。
7 不正行為と認定された年度の翌年度以降、関係省庁の全ての研究資金への研究代表者、研究分担者(共同研究者)及び研究補助者としての申請を制限する。制限期間については、不正行為の重大性、悪質性及び不正行為への関与の度合いに応じ別に定める。

(措置内容の公表)
第24条 最高管理責任者は、告発が不正行為と認定された場合、原則として、措置の対象となった者の氏名・所属、措置の内容、不正行為が行われた対象資金に係る制度の名称及び当該研究費の金額、研究内容と不正行為の内容、調査機関が公表時までに行った措置の内容、調査機関が行った調査結果報告書(調査委員の氏名・所属、調査方法、手順を含む)などについて、速やかに公表する。ただし、告発等がなされる前に取り下げられた論文等における不正行為に係る被認定者の氏名・所属は公表しないことができる。なお、告発者名については、告発者の了承がなければ公表しない。
2 不正行為と認定されなかった場合は原則として調査結果を公表しない。ただし、公表までに調査事案が外部に漏洩していた場合及び論文等に故意によるものでない誤りがあった場合は、不正行為が行われなかったこと(論文等に故意によるものでない誤りがあった場合はそのことも含む)、被告発者の氏名・所属に加え、調査委員の氏名・所属、調査の方法、手順等を含む調査結果を公表する。
3 最高管理責任者は、告発が悪意による告発と認定された場合、告発者の氏名・所属、措置の内容、調査機関が行った調査結果報告書などについて、速やかに公表する。

(措置と訴訟)
第25条 措置を行った後、不正行為の認定が不適切であった旨の裁判が確定したときは、最高管理責任者は直ちに措置を撤回する。なお、訴訟の提起に関わらず裁判所の判断がなされるまでは、当該措置は継続する。
2 措置により研究費等の返還がなされていた場合、最高管理責任者は、その金額を措置対象者に再交付することができる。
3 措置により研究の打ち切りがなされていた場合は、最高管理責任者は打ち切りの対象となった研究の状況に応じて再開するか否かを決定する。

(是正措置)
第26条 本調査の結果、研究活動上の不正行為が行われたものと認定された場合には、最高管理責任者は必要に応じて、速やかに是正措置、再発防止措置、その他必要な環境整備措置(以下「是正措置等」という。)をとる。
2 最高管理責任者は、研究開発部の責任者に対し、是正措置等をとることを命ずることができる。
3 最高管理責任者は、第1項及び第2項に基づいてとった是正措置等の内容を該当する配分機関及び関係省庁に報告する。

附 則
この規程は、令和4年4月1日から施行する。

代表取締役 大塚 寛 制定
令和2年4月1日